2011年5月22日日曜日

北京雑感

今週の水曜日から土曜日まで北京に出張に出ていました。今回は中国科学院行政管理学院という研究所が主催する「宇宙政策と宇宙法に関するシンポジウム」という会議に出席していました。下の写真はその会議をやった建物です。なんとも中国らしさを感じない建物でした・・・。



中国に滞在中、ホテルや会議室からネットにアクセスすることがかなり難しく、TwitterやFacebook、ブログには一切アクセスができませんでした。なので、ブログの更新もできなかったのですが・・・。それでも日本から持っていったiPhoneからはアクセスできたので、メールやTwitterなども読むことはできたのですが、非常にフラストレーションがたまる状況でした。

こうした状況は、当然ながら中国共産党が中東などで起きた「フェイスブック革命」を恐れ、ソーシャル・ネットワークを遮断しているから生まれているのですが、確かにフェイスブックは使えなくても、中国独自のソーシャル・ネットワークのツールは広く使われているようで、人人網などはかなりポピュラーなようです。また、テレビのニュースなどを見ても、中東の民主化運動なども報道されており、思ったよりも窮屈な感じがしなかったというのが正直な印象でした。

確かに、外国の民主化勢力が中国国内に働き掛けて、急激に民主化運動などが高まっていくということについては相当な警戒をしているようですが、中国国内で徐々に表現の自由を認めていくという方向性を感じています。しかし、その認め方は極めて保守的で、共産党政権の支配を脅かすようなことは認められていないし、大規模な集会を促すようなものも認められていないようです。しかし、完全な言論封殺をしているというよりは、ある程度ガス抜きというか、発言の自由を認めさせることで不満を解消している部分はあるのかな、という印象はあります。やはり外から見ていると、どのような「塩梅」でコントロールしているのかがわからないので、現地に行って見る必要はありますね。

また、今回の出張で非常に印象的だったのは、これまで中国の政府関係者や研究者が、こうした国際会議ではかなりおとなしく(言語の問題もあるかとは思いますが)、何を考えているのかよくわからない、ということが多かったのですが、今回はそうではなかった、ということです。特にこれまでタブーだった2007年の衛星破壊実験や中国の軍事宇宙利用などに関しても、これまでは議題として取り上げるだけでも文句を言ってきたのに、今回は積極的に議論に参加し、政府の擁護をするのではなく、冷静に議論していたというのがとても印象的でした。

この辺も、中国の国内における空気の変化を感じました。その背景に何があるのか、私なりに考えてみたのですが、大きな要因になっているのは、中国がこれまで抱えていた、日本を含む諸外国に対するコンプレックスが薄くなり、大国としての自信を高めてきたことがあるのではないか、と思うようになりました。これまでは、中国のやっていることを取り上げて議論をするだけで、中国が非難されているという被害者意識というか、過剰反応をしていたように思うのですが、中国が名実ともに、自他共に大国として認められるようになってきたことで、少し心に余裕ができたというか、自分たちのやっていることを冷静に分析し、それをよりよくしていくための助言として諸外国からの意見を聞いているという雰囲気がありました。これはとてもポジティブな変化だ、という印象を受けました。

日本には中国に滞在経験がある人も多く、中国との関係も深いだけに、こうした変化にも敏感であるべきだと思うのですが、しばしば感情的な議論が先行し、中国で進んでいる変化を見落とす恐れもあるような気がしています。事実、私も中国のことは報道や文献からしか知りえなかったため、出発前に持っていた印象と、実際に数日間滞在した後の印象は少なからず違うものとなりました。

やはり「社会科学者」としてものを考えていく立場にある人間として、こうした経験や自分の目で見て判断することの重要性はあるな、という印象を持っています。もちろん、自分の目で見ることができるものは限られており、それがすべてではないことを自覚する必要はありますが、しかし、報道や文献からだけでは受け取れない「空気感」のようなものは大事だな、と強く感じています。

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