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会場にWi-fiが飛んでいないので、まとめて人類の持続的宇宙開発利用のための国際シンポジウム、初日午後のセッションのメモをツイートします。
人類の持続的宇宙開発利用のための国際シンポジウム、初日午後のセッション。今年の6月から国連宇宙空間平和利用委員会の本会議議長をやるJAXAの堀川さんが発言。国連の
宇宙活動の長期持続性ワーキンググループを紹介。なぜ日本人が報告すると形式的な話ばかりでつまらないのだろう?
形式的な話はホームページでも見ればわかることであって、わざわざ集まってくれた人の前で偉そうに話すことではないと思うのだが…。せっかく人が集まったのであれば、
単なる情報ではなく、もっと踏み込んだ分析や議論をするべきなのではないだろうか?
米国陸軍宇宙統合機能部隊副司令官のカート・ストーリー准将。宇宙資産(衛星など)は高価であり、重要であるがゆえに守らなければならないことを強調。同時にSSAのデー
タを共有することで宇宙空間の持続可能性を高めることを使命とすると発言。自らの利益を守るために地球益に貢献するという論理。
Joint Space Operation Center (JSpOC)では軍のデブリ情報だけでなく、民間企業などが持つデータなども統合したJoint Mission System(JSM)を構築し、精度の高いデー
タを提供していると説明。米軍が国際的な官民協力のハブになっている。
米軍宇宙戦略軍のデュアン・バード少佐。突如、演壇を降りて聴衆の中に入ってオーディエンスに「なぜこのシンポジウムに来たのか」を聞き出している。なんだかアメリカ
のトークショーを見ているようだ。日本人のオーディエンスも頑張って英語でしゃべってる。なぜか企業から来た人が多い。
米軍でもまだ数千の宇宙デブリをカタログできていない(誰が生み出したデブリかわからない)。大変危険なデブリであっても、そのデブリが「自分の物」でない場合、デブ
リの元々の所有者に断らずに除去することができるか?誰がその物体をデブリと認定するのか?
デブリ除去の技術は衛星破壊の技術と同じであり、どうやってデブリの除去を可能にし、活動中の衛星への攻撃を不可能にさせることができるのか?今、デブリの問題を対処
しなければ、我々の子供や孫が問題に直面する。なんだか年金の話を聞いているような気がする。
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人類の持続的宇宙開発利用のための国際シンポジウム、初日午後のセッションの後半。NASAジョンソン宇宙センターのデブリプログラム室長のユージーン・スタンスベリーさ
ん。昨年、コントロールを失って地球に再突入したUARSの説明。
コントロールできない衛星がふらふらする中、ORSATというソフトウェアを使って再突入ポイントを解析し、デブリの落下予測をした結果、人に当たる確率は1/3200と判断した
とのこと。今後は再突入しても燃え尽きるような設計が必要との結論。
ドイツの宇宙状況認識センターのウーウェ・ヴィルト氏。ドイツのX線地球観測衛星のROSATがコントロールを失って再突入した時の説明。ドイツは軍民が連携して宇宙状況監
視をしていて、限られた予算と人材の中で効果的な対応をしようとしている。
ドイツ一国ではROSATの再突入の計算ができなかったため、欧州宇宙機関(ESA)に依頼して解析してもらったとのこと。やはりデータ共有は重要だ。軍だの民だの言ってデー
タ共有ができない日本とは大きな違いだ。
再突入の計算は衛星の軌道情報だけでなく、太陽活動や地球の大気の状況など、様々な条件を加味してモデルを作成し、再突入の予測を立てる必要がある。なんとなくSPEEDI
の話と似ているな。
元米国空軍参謀長、国防分析研究所(IDA)のラリー・ウェルチ氏。宇宙には「主権」の概念がない、故に伝統的な国際条約を適用することが難しいと発言。拙著『宇宙開発と
国際政治』の第八章で論じたことと同じ論理だが、ウェルチさんのような大御所だと説得力があるな。
宇宙の持続的利用は宇宙空間だけの話ではなく、サイバー空間の話でもある。サイバー空間が使えなければ、宇宙からの情報も無意味になる。サイバー空間の安全保障と宇宙
空間の持続的利用は連続した問題群との指摘。全くその通りだ。
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質疑応答:国務次官補代理のローズ氏。アメリカ独自の「行動規範」があるわけではない。EUが提出した「行動規範」を基礎にする。これまでEUは「行動規範」を作るプロセスが不透明だったのが問題。オープンなプロセスで国際的コンセンサスを作るのが目的。(鈴木:結局、自分が関わることなくEUが決めて、それが国際的なスタンダードになることに対する不満がアメリカだけでなく、インドやブラジルなども含めてあるのだ、ということが良くわかる回答だった)
同じくローズ氏:透明性、信頼醸成措置(TCBM)として重要なのは宇宙安全保障の対話を進めること。TCBMで重要なのは誤解を少なくすること。重要なのは中国との対話。2007年に中国が行った衛星破壊で生まれたデブリが中国の衛星にぶつかる予測が出たとき、アメリカは中国に警報を出した。中国は自分の行為の報いを受けるべきだが、その結果生まれたデブリがアメリカの衛星にぶつかるリスクが高まる。だから、中国に警報を出した。(鈴木:中国との関係でアメリカが情報を持っているから中国にお仕置きできたのに、それをやると自分に影響があるからできない、という話は面白い。アメリカが情報や宇宙技術で圧倒的な優位性があっても、宇宙空間ではそれが権力として機能しない、ということを意味する回答だった)
米国国防総省のフィンチ氏:日本に期待することとして、新しいデブリを出さないことは当然だが、日本が独自の宇宙状況監視(SSA)能力を強化すること、そのデータを共有することを期待する。デブリ除去の研究開発でも協力してほしい。(鈴木:ある意味、予想通りの回答。これ以上のことで何かできないのだろうか。まだ日本がやるべきことがありそうな気がする)
同じくフィンチ氏:大学などの小型衛星もきちんと国際的なデブリ低減ガイドラインに従って、寿命が終わるときにデブリにならないような運用をしてほしい。
米国戦略空軍のバード氏:中国の認識をどう変えるか。中国の認識を変えるためにできることは限られている。とにかく対話を続けるしかない。彼らが対話に応じるまで辛抱強く待つしかない。中国は自らの衛星破壊実験からいろいろと学んでいるはずだ。だから、対話することの必要性をそのうち理解するはずと考えている。(鈴木:なかなか正直で、ストレートな回答だった。国際的なコンセンサスを作る難しさが実感できる)
また、明日、二日目の内容をブログに掲載する予定です。
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