まず、武器輸出三原則ですが、1967年に佐藤栄作内閣が定めたもので、それは以下の三つの原則によって成り立っています。なお、これは1967年4月21日の国会答弁で出されたもので、質問主意書のように閣議決定を経たものではない形で出されました(のちに閣議了解事項)。
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合
しかし、この三つの原則は三木政権の時に「平和国家としての立場」から、以下の原則に読み替える、ということになりました。
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
つまり、この考え方によると、共産主義国、国連によって武器禁輸が課されている国、紛争当事国には武器の輸出を「禁止する」という原則があり、そのうえで、それ以外の地域に対しては武器の輸出を「慎む」となっています。また、武器製造関連設備も含めて「武器」とする、ということになっています。
では、この「武器」とは何を意味するのか、という定義の問題が出てきます。それは以下のように定義されます。
まず一般論として:
(1)武器輸出三原別における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいい、具体的には、輸出貿易管理令別表第1の第197の項から第205の項までに掲げるもののうちこの定義に相当するものが「武器」である。
(2)自衛隊法上の「武器」については、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置等」であると解している。なお、本来的に、火器等をとう載し、そのもの自体が直接人の殺傷又は武力闘争の手段としての物の破壊を目的として行動する護衛艦、戦闘機、戦車のようなものは、右の武器に当たると考える。(出典:経産省HP)
となっています。ここでの要件は「軍隊が使う」という使用者が規定され、「直接戦闘の用に供される」という使用目的が規定されています。で、その具体的なリストとして外為法輸出貿易管理令別表第1の第197-205項までのアイテムを指します。
また、それ以外の「武器」の定義として自衛隊法における「武器」の定義も援用し、外為法輸出管理令別表のアイテム以外のものもカバーしています。
さらに「「武器輸出三原則」上の「武器」には輸出貿易管理令別表第1に「部分品」又は「附属品」が規定されている場合は、その「部分品」又は「附属品」も含まれる。」ということにもなっており、この「部分品」ないしは「附属品」という範囲は定めがないので、ちょっとややこしいのですが、上記のように定義される「武器」に直接かかわる部品や付属品(たとえば戦車のキャタピラと大砲の砲身とか)を指すということになっています。
ここまでは、私がツイートした「大型武器の輸出はしてこなかった」ということの意味です。
ここでちょっとややこしいのが「平成3年11月の輸出貿易管理令の一部改正により、1-(3)の「第109の項」及び2-(1)の「第197の項から第205の項」は、「第1の項」に変わっております。」という注です。経産省のHPで見ていただくとわかるのですが、別表第1の「第1の項」というのは「武器」となっていて、その中には「銃砲・銃砲弾」という項目があるのです。
これを見ると、ライフルなども「武器」のカテゴリーの中に含まれる、ということになってしまい、これが混乱の元になっています。
つまり、一方で「軍隊が使う」「直接戦闘の用に供される」という規定だけで判断すると、狩猟用のライフルなどの輸出は可能という判断が可能であり、逆に「別表第1の第1の項」という要件で見れば狩猟用であってもライフルの輸出はできない、ということになります。
この点は、武器輸出三原則が持っている矛盾なのですが、具体的に解決する措置が取られることもなく、矛盾した状況のまま現在に至っています。政府としては、「別表第1の第1の項」という規定で判断しているようですが、政府がすべての輸出品を検査しているわけではないので、輸出者が「軍隊が使う」「直接戦闘の用に供される」という基準だけで判断すると、外国に輸出してしまう、という可能性が高くなる、ということになります。
それ以外にも、武器輸出三原則はいろいろな矛盾を孕んでいるのですが、それについては、また別の機会に議論したいと思います。
日本語がおかしいです。
返信削除武器輸出三原則ですが、1967年に佐藤栄作内閣が定めたもので、それは以下の三つの原則によって成り立っています。
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合